2010年6月13日日曜日

成年後見に関するミニ知識----利益相反とは?

親が子の代理になって何かを行うことは世間ではよくあることです。別に親でなくとも、代わりにしておくわ、との日常の付き合いはよくあることといえます。この場合、本人と親(代理人)との利害、行為の目的は一致していることがその前提にあります。刑事裁判における被告人とその弁護人は利害・目的が一致しているとの外形的事実を前提としています。
しかし、親と子の利害が対立する場合もこの世の中、遺産相続を始めとして数多くあります、その場合は親といえども子の代理人になれないはずです。
対立せざるを得ない社会的な立場に双方がおかれているにもかかわらず、その両者の間に代理契約関係があるとすれば、それは「利益相反」との非難を避けられません。双方がそれで了解しているのなら別にいいではないか、との反論はなりたたず、「利益相反との外形的な事実」がこの場合代理契約の無効性を表しているわけです。
より単純にいってしまえば、同一の商取引で売り手は買い手の代理人にはなれないし、なっているとすればそれは商取引とは言えないということです。

以上を前提にして、現在の日本の精神科病院内ではどのような金銭管理がなされているかを見ていきましょう。まさに「利益相反のモデル」といえる現状が精神科病院には存在しています。
 入院患者は携帯電話をはじめとして現金も手元に所持できない。では入院中の「小遣い金」はどうしているかといえば、病院が「 強制的に 」預かっている。病院は院内売店をかかえており、おやつやタバコなどの日用品が、どのようにして本人の手元に届くのかといえば、伝票に本人の希望の品を書き(書けない人はどうしているのでしょう?)後日、病院職員が本人に品物を手渡す。このやり方がいまだに多くの精神科病院の現実です。
この場合、病院側と入院者とがどのような内容の契約をかわすか、ということ以前に、強制的になされている以上は、本来の契約の体裁を持っていないことが指摘されねばなりません。入院者に契約を拒否、または解除する権利、自由が実質的に保障されていないのです。
「 所持金は預けなくても預けても、それはあなたの自由です。預けた場合は一定の管理料を頂きます。どうしますか? 」と言う選択肢を提示できる状況が本来の契約というものです。
ほとんどの精神科病院ではこの本来の「預けることを拒否する権利」は侵害されたままです。だとすればそれは「契約」ではありません。

入院すれば、自動的に所持金は取り上げられ預けさせられ、そして管理料をその取り上げられた所持金から「天引き」される。この精神科病院の不合理な実態、一定の管理料と引き換えに所持金を預けさせられる、という「法律行為」は、「利益相反」として社会的に非難されるべきでしょう。
契約当事者としての能力が病状によって減退している入院患者さんもいることは確かでしょう。その場合には病院職員以外の「第3者」がその入院患者さんの代理人として病院当局との契約にあたるべきであって、成年後見制度はこの点で大いに利用されねばなりません。
管理料を徴収している以上それは「一定の法律行為」であり、外形上は入院患者と病院当局の商取引です。病院に雇われているPSWや医事課の職員が「第3者」になることはできません。職員が「第3者」のふりをしているとすれば、それこそが「利益相反行為」になるわけです。

 残念なことですが、精神科病院内の見てきたような「利益相反状況」は、高齢者、障害者を対象にした入所型の福祉施設でも程度の差はあるとはいえ起こりえるし、現に起こっています。
成年後見制度の利用が広がり、この精神科病院や福祉施設内における不合理な実態、「利益相反」、人権侵害状況を改善していく武器として機能するようにこれからも働きかけていきましょう。

(2010・5・28記 文責S)